1型糖尿病は、インスリンを出す膵臓のβ細胞が、自己免疫(自分の細胞を攻撃してしまう)などの原因で壊されてしまう病気です。β細胞からインスリンがほとんど出なくなることが多く、1型糖尿病と診断されたら、治療にインスリン製剤を使います。注射は1日4回がメイン、場合によっては1日5回になることもあります。
世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病と言われています。若い方を中心に幅広い年齢で発症し(子供の糖尿病といった印象があるため小児糖尿病とも呼ばれることもあります)、生活習慣が関わる2型糖尿病とは、原因、治療が大きく異なります。
私は野球が大好きなのですが、阪神タイガースに所属する岩田稔投手(左投左打、大阪桐蔭高校→関西大学)も、大阪桐蔭高校2年の冬に1型糖尿病を発症、この病気を理由に、内定していた社会人チーム入りを取り消された過去もあるといいます。「自分が頑張ることで、同じように糖尿病と戦っている人たちを勇気づけていきたい」と話されていて、私も応援しています(私が筋金入りの西武ライオンズファンなのは内緒です)。
発症パターンから、次のように分類されています。
【急性発症1型糖尿病】
1型糖尿病で最も頻度の高い典型的なタイプで、糖尿病の症状が出はじめてから数ヶ月でインスリン依存状態になります。発症した後に、一時的に残っている自分のインスリンの効果が改善する時期(ハネムーン期)がある患者さんもいて、その時期は「治った!」と勘違いされてしまう場合もありますが、その後は再びインスリン治療が必要となります(この時期のカウンセリングはとても重要なので、時間をかけてご説明しています)。血液検査で抗GAD抗体・IA-2抗体などの自己抗体を認めることが多いです。
【劇症1型糖尿病】
最も急激に発症し、1週間前後でインスリン依存状態に至るタイプです。すぐにインスリンを補充する治療がなされなければ「糖尿病ケトアシドーシス(DKA、糖尿病の代表的な急性合併症)」となり重篤な危機状態になることもあるため、早い段階での診断が重要です。
前述の自己抗体は血液検査で認めないことが多いです。発見される時点での血糖値は高いですが、発症が急激であるので、月単位で徐々に上昇する血糖値の指標であるHbA1cは低めであることも特徴です。
【緩徐進行型1型糖尿病】
SPIDDM(Slowly Progressive InsulinDependent(type 1)Diabetes Mellitu)と呼ばれるもので、半年~数年かけてゆっくりとインスリン分泌が低下していくタイプです。初めは2型糖尿病のようにインスリン注射を使わなくても血糖値を抑えることが可能ですが、経過中の血液検査でGAD抗体などの自己抗体が検出され、実は緩徐進行1型糖尿病だったと分かることもあります。この場合、膵臓に負担をかけるような内服薬は推奨されず、インスリン治療などで膵臓を保護する治療を開始することが望ましいといわれています。
【緩徐進行型1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準2012】
